清水灯子の日記

都市か、あるいは郊外に住んでいる清水ちゃんの日記。

昨日のことと今日のこと

12月4日

昨日が月曜日で今日が火曜日で今もそうだというのが変な気がする。初めて遅刻しそうになり、そうはならなかった。

とても大切な人か、あるいはクマか、または巨大な犬と熱烈に抱き合っていて、別れるときか再会したときのどちらかで、とてもこちらがまわす腕の力を、先に緩めてよいという雰囲気ではなかった。左の腕を相手の右腋下に差し入れて、右は、肩越しに背中にまわし、手に電話を持っていて、それがもうビービー鳴るのだ。一番大事なところを邪魔にしてやろうという、携帯電話の底意地の悪い側面が頂点に達した瞬間で、しかもそれは常にどうでもいい、取るに足らない内容だったため人差し指を物凄いスピードで動かして、かかってきた電話もまだかかってきていない電話も片端から切ってしまった。要するにそれは携帯の目覚ましが鳴っていたのであって、人差し指の懸命さのお陰で、いつも出勤している時間に家で目を覚ますことに成功していた私は、ほとんどそのままの顔にドライヤーとマスクだけあてがって出社したんだと思う。

雨の日の電車はもう間違いなく混んでいて、ほとんど見たことのない人たちの中に、更にほとんど見たことのない人たちが混じり、この人たちは普段どうして出勤してるのか、多分、歩いてか、自転車で、こういう日にだけいくらかのお金を払って電車に乗り込んでいる。傘を買って、そのまま電車に忘れて、そうするとほとんど行きがけのコンビニで300円を傘という形に変えて、そこに納めたのだという形になり、形というのはすごい、電車内で財布から小銭をいくらか繰り出して網棚や降車口付近にそっと置いていくというのはまだ見たことがないから、ともかく雨が降るときっと経済が動いている。

寝過ごしたのはきっと一昨日の夕方にMONSTERを飲んだせいで、もう日曜日が終わるのにモリモリと力を得るために、煙草と一緒に買った。ミドリのシュワッとしたやつで、美味しくはないけれどいかにも体に不足しているものを集めたという味がする、そのときは風邪だったから、失われた多量の鼻水とエネルギーと、体温はむしろ普段より増えているのだからそれを減産させたような、いつもよりまずかった。運動してお風呂に入り、動画を見てさあ寝るのだというときにモリモリ効いてきて、疲れているのに眠れなくなってベッドの上で布団を被ったり除けたりすることになってしまった。考えると、悪いのはエナジードリンクで、風邪をひいた私で、悪さをするウイルスで、私に移した元の宿主で、そこに居合わせた私で、場にいることを強いた会社で、そこに入社した私で、人のせいにしたいのだけど何故か私の存在が原因が詰まった袋様の空間の中に居合わせるから、やっぱり寝坊は私のせいなのかも知れなかった。

そんな風に決定的に考えると生まれた瞬間から一昨日遅刻しそうになることが決まっていたような気持ちになるけれど、そんなわけなかろうがと思うし、実際はたまたまなのだ。たまたまという言葉は上司が好んで、よく使い、今日も使っていた。過去グループ企業の会議みたいな場で、なぜ君のところはそううまくいくのといった趣旨のことを社長に聞かれ、なんとなく努力とふんばりでやってきたことをそう簡単に聞かれたことが癪だったので、たまたまですよと笑ってごまかし、上司はそのあとしばらく干されたらしい。それにしても、勤務中こんなに喋る人は珍しく、いつも何かしら喋っていて、私もいつもこの人ほんまによう喋るなと思っている。干されてもすぐ行く先で人と打ち解けて仕事ができてしまうので、前回似たような会議があった後の懇親会、件の社長が握手をしに駆け寄ってきた、やっぱり頑張ってれば正義は勝つんやなという話。うーんたしかに正義は勝つのだ、そうであって欲しい。

明日の朝は早いからエナジードリンクを飲んでモリモリ行こう。