清水灯子の日記

都市か、あるいは郊外に住んでいる清水ちゃんの日記。

モノとか思い出

4月3日

 

一昨日にインターネットの通販で注文したオーブンレンジが今日届いた。到着してみたらこれって12畳用とかそんなんと違うのといった巨大さで、これが宅配ボックスに入るのならばそれは私も入ることが可能な空間だという意味で、まあともかくアホみたいにでっかいわ。レンジの電波を食らうと脳が破裂するので使わないというお家で育った私にとって、今回が初めての注文で、もちろん初めての所有ということになった。そら浴びたら脳も破裂しますわな、哀れな生卵君らの様子を見たらそうや、でもマイクロウェーブを浴びるために購入したんではないから、多分大丈夫なんではないか。わざわざ脳みその水分をなんかものすごい勢いでぶるる振動させんとも、この頃彼氏が電話口で繰り返すハローキティポップコーンマシーンの歌で少しずつ脳細胞は死に瀕していっているはずで、この巨大なオーブンレンジで私はたこ焼きを食う。

皿を突っ込んでボタン押すとそれまででっかいなりにしおらしくしていたのが急遽ブモアアア! なんつって叫びだしてビカビカ光ってその上もうものすごい勢いでグルングルン回るものだから、腰を抜かしてしまった。こんなに必死こいて仕事にかかる家電の姿をあまり見たことがなくて、あのちょこまか横に開いている腹立つ隙間から漏れる光を見ると目がつぶれるような感じが気が気でなく、五分の間マイルーム(いうか居室いうかキッチンの次の間いうか)に身を隠していた。出来上がったたこ焼き君はどろべっちゃという感じで、なんや粉と水とタコみたいやんという風で、実際そんな味がした。家に当たり前に無いものが他所の家にはあって、しかもそれが今私の部屋にあるというのが妙だ。モノに執着する私ではあるけれども、こうして初めての仕事を、たこ焼き商品が単にまずかった可能性も無いわけではないが、失敗したのに平気な顔で先住の冷蔵庫の上に座りよって、まあそこしか座る場所が無かったというのは理解できるけれども、相当ふてぶてしいことには違いない、君には執着してやらんと思う。

 

昼間に乗組員のユニフォームを棚卸すときに、お気に入りのカッターナイフがどっかいっただけで気を失うくらいテンションが下がって、人って気持ちが下向くとほんと気絶するし、弱い生き物やなと実感する。別にデザインナイフでも何でもない、事務所にあった新品のパッケージを私が開けて私のモノっぽく持っていたということなのだが、真の気持ちとしてはあれはやはり私の持ち物であって、葦ですらカッターナイフのこと嘆かんだろ思う、まあ元々考えてないからほんま仕方ないが、私は悲しい。こうして話すいうか書く頃には出てきているのが筋というものだろうと思うのが、今もって見当たらないのが腹立たしく、ということは私は今日事務所にいる間中めそめそ腹を立て続けていた。

新しい元号の話をしておって、人らが。カズレーザーの本名が次の元号の反対なんですわよということでえーそりゃすごいみたいなテンションで、なんもすごくないわ、そんなもん。やけど小さい頃大分いじめられたやろな、そんな名前やったら、「ワレェ」って、いやそれは大阪いうか関西の発想やと思うやんな、私は。話聞きながらスマートフォンで出身地調べもって、ほんま腹立つわ、いや、もうええわ、それは。

 

尊敬するボスが春の人事異動で東京に出て行ってしまったから何話しても味気なく、なんやそわそわ落ち着かんでしんどい。今年入ってトラブルは続くし、船内でプチ内ゲバいうかプチゲバが始まって船からガンガン電話が鳴る。私が朝から電話してる間、後輩の彼がなんやぼちぼち言いながら御榊の水替えと雑巾がけと、前はボスの仕事だった神棚の世話を今日から始めよった。掃除が済んで最後の一拝のとこまでまだぼちぼち言って、船神様やから、電話が終わって、あー君、こうトラブルが続くのは君のせいであるぞという意味の冗談を言うと、彼は「たはー」と笑って頭を掻いた。

何をぶつぶつひとりごと言っとったんよと聞くのに、今日からこのイケメンがお世話さしていただきますんで、一つよろしくお願いしますってウインク。きもいわー、あほやんと声をかけて笑ったけど、なんか心が弱ってたんかな、実際しびれたわ。